木村 文乃さんの「わたし大賞」

木村 文乃さんの「わたし大賞」とは?お世話になった知人へ贈る「初心に帰らせてくれてありがとうで賞」
俳優人生の始まりは、信頼できる監督との出会い
私が俳優という仕事と出会ったきっかけは、オーディション雑誌の募集ページを見たことです。役柄の詳細に「島の象徴のような存在で、生命力に溢れ、とにかく駆け回っている」と書かれていました。恐れ多くも、それを読んだ時に「あれ、これ自分にしかできないんじゃないか」と思い込み、オーディションに応募したのが始まりでした。
そのオーディションが五十嵐匠監督の「アダン」という映画で、なんと合格することができました。ただ母は俳優になることにとても反対していたので、どう話したらいいか分からないまま日々を過ごしていたところ監督から連絡があり、「僕は君でいきたいと思っているから、きちんとお母さんと話しなさい、そうすればわかってくれるから」と言われました。おそらく16年生きてきて、初めて親と膝を突き合わせて正面から話をしました。そこからはずっと応援してくれています。五十嵐監督ではなく、他の監督だったらきっと違った俳優人生になっていたと思います。この出会いが1番大きかったですし、この世界へ入るきっかけとなりました。
「一生の仕事にする」と決心した瞬間
持病の悪化などで芸能から2回ぐらい遠ざかっているのですが、その度に何かしらのご縁があって、自分の人生のどこかに俳優業がずっと残っていました。知人の舞台を観た時に名刺をくださったのが今の事務所の方でした。「え、この事務所って、小栗旬さんがいるんだ!?すごい事務所じゃん」と思っていたら、会長が袋いっぱいのメロンパンを持ってきて「お前も食べるか」って笑いながら仰ったので、食べたんです。そうしたら「食べっぷりがいいな」と言われて。それまでこの仕事をしてきて大人は自分を利用するものだと思っていたのですが、普通の人に見えてきて、そこから素直に話すことができました。「1回全部崩して、もう1回初めから組み立て直さなきゃ駄目だ」と会長から言われたことが第2の転機でした。

「俳優を歩み続ける」上で得た、人との関わり方
私はシングルマザーの家庭で育ったので、母親から、男性に甘えなくても生きていけるようにと、結構厳しく育てられたんです。
だから、甘え方や頼り方を知らずに育ってきてしまいました。大人が隣にいて、真剣に向き合ってくれるという経験が無かったのですが、会長が1回私を崩してくれて、チーフマネージャーが私に寄り添ってくれる。そういうところからちょっとずつ心がほどけていきました。周囲に人がいてくれる、助けてくれる有り難みを実感しました。26歳の時に、初めて主演のドラマが決まって、主演って1人で突っ走るのではなくて、みんなが周りにいてくれて、初めて成り立つものだと気付きました。責任の重い仕事を任されていくうちに、人との関わり方やあり方を学んだ感じです。
周囲の人への「感謝と謝罪」は、常に忘れないようにしたいなと思っています。
お世話になった知人へ贈る「初心に帰らせてくれてありがとうで賞」
私が今回のテーマである『わたし大賞』を贈るとしたら、いつも「初心」を思い出させてくれる知人に贈りたいです。能登半島が好きすぎて、会社ごと移住し、能登半島地震後は被災地支援を続けている方です。
能登のことをポジティブに発信しながら、悩んでもがいている姿もSNSで見せてくれるので、発信力のある立場として私にも届かない声を届けられるかもしれない、と思わせてくれます。
能登のみなさんが「地震や津波の被害は、一瞬ではなく、これが何年も続くことで、失うものがとても大きくなっていくことを忘れないでほしい」と仰っているのを聞くことがあります。「ああ、そうだったな。全然終わってないし、これからもずっと続いていくことで、自分たちにも関係する話なんだ」と思い、それが私の仕事というか、あり方にも繋がっていくように思います。だから私だけでも「見てるよ、知ってるよ」という思いを込めて「初心に帰らせてくれてありがとうで賞」を贈りたいです。

『わたし大賞』を通じて、改めて気づいた思い
このようにありがとうについて考える、感謝だったり、普段口にできないことを形にすると、した方もされた方もきっと覚えているんですよね。忘れないと思うから、こういう機会は絶対にあった方がいいと思いました。
今年の4月に、三井住友信託銀行の新入社員の皆さんの前でお話をする機会をいただいたのですが、皆さんのまっすぐな目を見たら緊張してしまって…。その時に、もう格好つけても仕方がないから「緊張してます」と言いました。「緊張して手も震えるし、うまくも喋れない。でも確実にそれぞれ積み上げてきたものがあって、それが振り返った時に自信になるから、緊張したり震えたりしてしまうことで自分をダメだと思わないでください」とお話しさせていただきました。コツコツやっていれば開ける道があるということとともに、見てくれる人がいて、支えてくれる人がいて、自分の身になるものがあることを伝えていきたいです。私はこれから支える側になっていくので、これまで歩いてきた姿を見せていくことで、少しずつきっかけを与えられるような立場になっていきたいです。
第3回作品募集中
応募締め切り 2025年10月9日(木)