財産目録の目的と作成方法について解説

財産目録とは?
「財産目録」と聞いた際、皆さんはイメージが湧きますでしょうか?普段生活している中であまりなじみのない言葉かと思います。相続や終活について考える際、欠かせないのが「財産目録」です。本コラムでは、財産目録の目的や作成方法について解説していきます。
財産目録とはどのようなものか
「財産目録」とは、一定の時点において、保有するすべてのプラスの財産(預貯金、有価証券、不動産等)とすべてのマイナスの財産(各種ローン等)について、その区分、種類ごとに一覧にし、財産の状況を明らかにしたものです。
つまり、マイナスの財産を含めたご自身の全ての財産をわかりやすくリストアップしたものとなります。
財産目録を作成する目的
「財産目録」が利用される場面は、主に以下の3つがあります。
利用される場面 | 利用者 | 利用方法 |
---|---|---|
遺言書の作成 | 被相続人(ご自身) | だれにどの財産を相続させるか具体的に記す際に利用 |
遺産分割協議 | 相続人(ご家族) | だれがどの財産を相続するか判断する際に利用 |
相続税の申告 | 相続人(ご家族) | 相続税の計算の際に利用 |
遺言執行者等に就任する等、特定のケースを除き、財産目録の作成は義務ではありませんが、財産目録があると財産の状況が一目で分かることになりとても便利です。
生前に財産目録を作成すると、ご自身だけでなく相続人(のこされたご家族)にもメリットがあります。財産目録を作成するメリットについて解説していきます。
財産目録を作成するメリット
生前に財産目録を作成する場合、遺言書の作成に利用できることだけでなく、以下のようなメリットがあります。
メリット① 相続に関する対策・計画に活用できる
財産目録を作成することで、ご自身の財産を改めて整理でき、相続に関する対策・計画に活用することができます。
遺言書を作成する際は、財産目録があることで、だれにどの財産を相続させたいかや配分する財産のバランスを判断する材料となります。
また、遺言書を作成しなくても、相続税がかかるかの計算や、終活などで財産を整理する際に有効です。
相続税は、相続財産が基礎控除額(3,000万円+(600万円×法定相続人の数))を上回った部分にかかる税金です。「生前贈与」などで相続税対策をする際にも、ご自身の財産総額や種類などの全体感を確認したたうえで、計画的に行うことが可能となります。
終活の目的の1つに、相続が発生した際に家族に迷惑をかけないことが挙げられます。財産目録を作成することで、ご自身の財産で「なにが」、「どこに」、「どれくらい」あるのかを把握できますので、財産を整理する際や、いざ相続が発生した際にご家族が活用することができます。
メリット② 相続人(のこされた家族)の負担を減らせる
相続が発生すると相続人は、相続開始を知った日から3ヵ月以内に、単純承認、相続放棄、限定承認の3つの相続方法を選択することができます。各種ローン等のマイナスの財産が多い場合は、相続放棄を選択し、相続人が被相続人のすべての遺産を相続する権利を放棄することができます。相続が発生した際に、財産目録がないと、相続人はいちから被相続人の財産を調べる必要があり、期限内で判断するのが一苦労となります。
また、一般的に相続税の申告期限である10ヶ月以内には、遺言書がない場合に限り、相続人全員で遺産分割協議を終える必要があります。遺産分割協議とは相続人全員で遺産の分け方についての話し合いをすることです。遺産分割協議では、被相続人のすべての財産を把握し、話し合いをする必要がありますので、財産目録が必要となります。また相続人の知らない財産が追加で発覚し、遺産分割協議がやり直しとなった話も少なくありません。相続税の申告においても、財産目録を作成しておくと課税対象がはっきりと分かるので、相続人の相続税申告が楽になります。
上記のような相続人(のこされた家族)の負担を減らすためにも、生前から財産目録を作成することをおすすめします。
財産目録作成の流れ
財産目録を作成する際、まず必要なのはプラスの財産とマイナスの財産の把握です。ご自身の財産を把握できていなければ、作成できませんので、現時点で「なにが」あるかの把握をしましょう。プラスの財産とマイナスの財産の各例はこちらです。
プラスの財産 | マイナスの財産 |
---|---|
預貯金 | 各種ローン(住宅ローンなど) |
有価証券(株式、債券など)、保険 | クレジットカード |
不動産、動産(自動車など) | 友人、知人からの借り入れ |
必要な書類の収集
ご自身の財産が現時点で「なにが」あるのかを把握したところで、次は「どこに」あるのかを確認しましょう。預貯金や有価証券などは、複数の金融機関でお取引をされている方が多数だと思いますので、通帳や報告書等をまとめておくと良いでしょう。
また、不動産を保有している場合は、「所在」、「地番、家屋番号」、「地目、種類、構造」、「地積、面積」、「所有者」、「評価額」等の細かい情報が必要となりますので、登記簿謄本などの準備が必要です。
財産の種類別の必要な書類はこちらです。
プラスの財産
財産の種類 | 必要な書類 |
---|---|
預貯金 | 通帳 |
有価証券、保険 | 報告書、保険証券 |
不動産 | 登記簿謄本 |
固定資産税納税通知書 | |
動産(自動車など) | 自動車税納税証明書など |
マイナスの財産
財産の種類 | 必要な種類 |
---|---|
各種ローン(住宅ローンなど) | 残高証明書など |
クレジットカード | クレジットカード明細 |
友人、知人からの借り入れ | 契約書など |
残高・評価額の確認
最後にご自身の財産が現時点で「どれくらい」あるか、残高や評価額を把握しましょう。
先ほどご紹介した必要な書類で、預貯金の残高や有価証券の評価額を確認することができます。ただし、特にご注意いただきたいのが不動産の評価額です。
建物や土地といった不動産は、相続税の申告では、路線価や固定資産税評価額を基準に評価しますので、路線価や固定資産税評価額は把握しておきたいですが、実際の取引額との差異が生じる可能性が高いです。都市部の物件なら、取引価額は相続税評価額よりも高くなり、地方の物件だと、相続税評価額が高くなるケースが多いです。遺産分割協議でこの差異が問題になるケースもありますので、相続税評価額の他、現時点の評価額を把握しておくのも良いでしょう。
財産目録のサンプル
財産目録には決まった書式はありません。ただし、財産ごとに記載した方がよい項目があります。財産の内容は今後も変わっていく可能性がありますので、パソコンが使える方は、手書きよりもエクセルなどを使用して作成することをおすすめします。財産目録を作成する際には雛型やテンプレートを参照して作成するとより効率的ですので、裁判所ホームページに掲載されている財産目録をご紹介します。
さいごに
本コラムでは、財産目録の目的や作成方法について解説いたしました。財産目録を作成する際は、一気に行うのではなく「なにが」「どこに」「どれくらい」を意識して一歩ずつ作成してみてください。財産目録に限らず、遺言書の作成や終活、相続手続きで困ったことがあれば、信託銀行や相続の専門家に相談しましょう。
三井住友信託銀行 個人企画部 日下 大地
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