終活は「やることリスト」づくりから始めよう

ひとくちに終活といっても、やることはさまざまです。充実した人生を全うするべくやりたいことにチャレンジする、万一の際に家族や周りの人へ迷惑をかけないようにモノや資産を整理するなど、いろいろあって何から始めればいいのか迷ってしまうのではないでしょうか。一度にすべてを進めようとせず、できることから少しずつ実行に移せばいいのですが、それには手始めに「やることリスト」を作成するのがおすすめです。
終活は、いきいきと生きるために、やりたいことの整理だけでなくお金の整理も大切です。そこで本記事では、終活のやることリストを作る理由や作り方、やることリストに含めたい内容について説明します。
終活とは?
終活とは、一般的に「残りの人生をより良く生き、自分の望む人生の締めくくり方ができるように、さまざま準備や行動をすること」とされています。人生100年といわれるほど長寿化が進行している時代においては、終活への関心がこれまでの「どう旅立つか」よりも「いかに充実した人生を全うするか」へと移行している傾向です。
なかには、これから積極的に終活をしようと考えている人もいるのではないでしょうか。ここでは、終活でやることや大切なことを解説します。
終活では何をやる?
終活を始める際に「やり方」「やること」「やる順序」など決まったルールはありません。自分自身が充実した人生を全うするために何をしたいか、何をするべきかが人によって違うように、終活でやること、やったほうがいいことも人それぞれに異なります。大切なのは、終活で自分や周りの人たちにプラスになる行動をすることです。
例えば、自分のためであれば「これまでやりたかったこと」「これからやりたいこと」を楽しむといった具合です。また、財産や不要品、契約など身の回りの整理をすることは、自分の家族や相続人にとっての負担を減らすことにつながるでしょう。他にも、自分の介護に不安がある人の場合は、介護になった際の対策をしておけば残りの人生の安心につながります。
終活で大切なこと
終活では、お金の整理も大切です。これは相続対策のための整理とは少し違います。終活は、相続とは違って「自分の死後」のことだけではなく「自分の残りの人生をより良く生きるためのもの」となるため、自分のやりたいことに対するお金が必要です。
不要なものを処分したり、残したりすることに注力するだけではなく、「これからのためのお金」と「家族に引き継いでもらうお金」を整理しておきましょう。
終活でまずやることは「やることリスト」を作ること
終活のやり方や順序に決まりはありません。自分が望むことをできそうなところから少しずつ進めていけば良いのですが、まずは「やることリスト」を作るのがおすすめです。理由は、大きく分けて2つあります。
「やりたいこと」や「やるべきこと」の整理ができるから
いざ終活しようと思うと「やりたいこと」や「やるべきこと」が、あれこれと思い浮かんでくるかもしれません。しかし、頭で考えるだけでは、何から手をつければいいかわからず、結局できなかったり、思うように進まなかったりするものです。また、思いついていても、すべてを一度に行えるものではありません。「やりたいこと」や「やるべきこと」を文字にしておくことで実行に移しやすくなります。
金銭的な理由から
終活をする、しないにかかわらず、最期の日まで生きるためにはお金が必要です。また、終活で「やりたいこと」を実現させるためのお金も準備しておかないといけません。漠然としたイメージであれこれとやりたいことにお金を使ってしまうと生活費に不安を感じるようになる可能性があります。また、逆にやりたいことを後回しにしていると残りの人生を充分に楽しめなくなるかもしれません。
「やることリスト」を丁寧に作っておけば、終活内容の整理や進捗状況の確認ができ、お金の使い方も計画的になってくるでしょう。
終活やることリストはどう作る?
繰り返しになりますが、終活でやることに決まりはないため、リストの内容にも決まりはありません。そのため、「残りの人生をより良く生るためにやりたいこと」「どんな人生の締めくくり方をしたいか」など自分自身が率直に思いつくことを書き綴っていくといいでしょう。
とはいえ、具体的に何を書けばいいか、わからない人もいるかもしれません。そういった場合は、他の人の終活を参考にしてみるのもいいでしょう。以下では、参考までに株式会社ハルメクが60~74 歳の男女を対象に実施した「終活に関する意識調査(2021年4月20日)」の「必要だと思う」終活ランキングから、多いもの10項目を紹介します。
順位 | 項目 | % |
---|---|---|
1 | 家具や家の中の荷物整理・処分 | 42.2% |
2 | 金融口座・金融商品の整理 | 38.6% |
3 | 衣服やアクセサリーなど身につけるものの整理 | 30.5% |
4 | アルバムや手紙等思い出の整理・処分 | 26.7% |
5 | パソコン内やSNSなどのデータの整理・消去 | 23.5% |
6 | エンディングノートの記入 | 22.7% |
7 | 加入保険の整理・見直し | 21.4% |
8 | お墓の準備・用意 | 20.5% |
9 | インターネットやSNSなどデジタル関連の登録・加入サービスの情報整理 | 19.9% |
10 | 生活面での利用サービスの情報整理(電気・ガス、生協、ジムなど) | 18.1% |
出典:「ハルメク 生きかた上手研究所調べ」
同調査結果によると、終活として必要だと思うものには、家具・家財や衣服などの現物やデータの整理・処分、お墓の準備などといった旅立ちの準備のための終活が多い傾向です。これらは、自分の死後に家族の負担を軽減させることにもつながるため、遺族に対する終活といってもいいでしょう。
なお、2位の「金融口座・金融商品の整理」は、遺族のためだけでなく、自分自身が残りの人生をより良く生きるためにも必要な終活です。生きていくためのお金と残すお金を分けることは、終活をするうえでとても重要です。
自分でやることリストを作る際は、「旅立ちの準備」「残る家族に向けた準備」「残りの人生をより良く生きる終活」に分けてリストアップするとより整理がしやすくなるでしょう。以下に例を挙げますので参考にしてください。
- 旅立ちの準備のための終活
-
- 家具や家の中の荷物整理・処分
- パソコン内やSNSなどのデータの整理・消去
- 遺影写真の用意
- 金融・不動産以外の財産の整理・処分(車・株・証券会社など)
- 不動産の整理・処分
- お葬式の準備
- 大切な人へのメッセージ作成
- 飼っているペットのそなえ
- 自分史作成
- のこされた家族に向けた準備のための終活
-
- エンディングノートの記入
- 親族・友人・知人の連絡先リストの作成
- 遺言書・財産目録の作成
- お墓の整理・墓じまい
- 残りの人生をより良く生きるのための終活
-
- 金融口座・金融商品の整理
- 加入保険の整理・見直し
- 会いたい人に会っておく
- ○○(しておきたかったこと)をしておく
- 終のすみかとして、自宅をリフォーム
- 終のすみかとして、施設を探す
- 終のすみかとして、引っ越し
- パートナー探し
終活やることリストを作ってみよう
実際に、終活のやることリストを作ってみましょう。もちろん、上述した項目以外にも「やりたいこと」「やったほうがいいこと」があればリストにどんどん加えて問題ありません。終活は、あくまで自分の希望ですから「これをやらないといけない」というものはありません。ただ、やることリストに入れておいたほうがいいものもあります。以下で、その理由とともに説明します。
エンディングノートの記入
エンディングノートとは、家族や友人など親しい人に対し、主に自分が万一の際のために伝えておきたいことを書き留めておくノートを指します。遺言のような法的強制力はないため、書く内容も書き方も自由です。「エンディング」という言葉から、自分の死後に見てもらうためのノートと考えがちですが、例えば認知症や病気で自分の意思を伝えにくい状態になった場合にも役立ちます。
エンディングノートには、市販のものもたくさんありますが、自分で作る際には以下のような内容を書いておくのがおすすめです。
- 介護や医療に関する希望
- 葬儀やお墓についての希望
- 電気・ガス、金融機関などの連絡先
- 病気や死亡時に知らせて欲しい親戚や友人・知人の連絡先
- 遺言書の有無
- 財産一覧 など
金融口座・金融商品の整理・リスト作成
「使うお金」「旅立ちのためのお金」「家族に残したいお金」を分けて管理しやすいように、金融商品や金融口座を整理し、資産リストを作っておきましょう。終活やることリストと同じく、資産リストも作っておけば老後生活に必要な費用や資産状況の確認がしやすくなります。
その結果、例えば有価証券などの換金しにくい財産の割合が多いとわかれば、引き出しやすい預貯金などへ変えておくこともしやすくなるでしょう。また、資産リストを作っておくことは、休眠預金の予防にもなります。近年は、インターネットバンキングやオンライントレードのように、デジタル資産として保有している人も多く、家族が資産の存在を知らないケースも増えています。
介護・死亡によって取引が途絶えたまま、家族も解約・相続の手続きをしないまま放っておくと休眠預金となってしまいます。休眠預金等活用法では、10年間取引のない休眠預金は民間での公益的な活動支援として活用できることをご存じでしょうか。場合によっては、自分の資産が相続されないままになってしまう可能性があります。
病気・介護・死亡などで自分が利用できなくなる場合を想定し、対策の一つとして金融機関の信託商品を利用する方法があります。
銀行預金だけでなく、クレジットカード類などお金に関するものは整理しておきましょう。
加入保険の整理・見直し
介護保険や医療保険など、残りの人生でどんな保障ニーズが高まるかを想像し、加入している保険の内容を見直してみてはいかがでしょうか。これから必要な保障が不足するなら増やし、逆に不要となった保障があれば解約・減額も検討しましょう。ただし、相続財産の状況によっては受取人を指定して保険で残すようにしておくのがいい場合もあります。
特に、死亡保障は高齢になると必要ないと考えがちですが、自分だけで判断してしまわずに金融機関など専門家に相談するのもおすすめです。
不用品、不要なサービスの整理
不用な家財がたくさんあると、死後処分として遺族の手間や費用の負担が大きくなる可能性があります。そのため、しばらく使っていない不用品は整理、処分しておきましょう。また、生協やジム、サブスクなどのサービスも、この先あまり使わないと思うものは解約するなど整理しておくと、無駄な支出を減らすことができ遺族の手間も減らせます。
さらに、スーパーや店舗の会員カードやポイントカードなども良く利用するものだけに絞っておくといいでしょう。年齢や生活スタイルによっては、車の処分や運転免許証の自主返納をしておくのもおすすめです。自治体によっては、運転免許証を自主返納することでタクシーや公共交通機関などの移動だけでなく、小売店や飲食店など生活上のさまざまなサービスで特典を受けられます。
住まい選び
「今の住まいで老後を過ごすか」「ダウンサイジングして住み替えるか」「高齢者住宅・施設に移るか」など、住まいに関する終活も大切です。今の住まいで住み続ける場合は、リフォームが必要となることもあるでしょう。バリアフリーなど高齢者にとって住みやすくするリフォームは、自治体の補助や減税を受けられる場合がありますが、事前に調べたり、資金計画をたてたりする必要があります。
高齢者施設に移るなど住み替えをする場合は、住み替え先候補を探すとともに現在の住居をどうするかの検討も必要です。「実家じまい」という言葉も耳にするようになりましたが、子どもや遺族が住まない実家の処分で多額の費用負担を強いられるケースも増えています。売却あるいは相続財産として残す場合のどちらがいいか、できるだけ早いうちから専門家に相談するのがおすすめです。
終活は思い立った時が始め時
終活は、思い立った時が始め時です。終活をスムーズに進められるように、まずはやることリストを作ってみましょう。終活でやりたいことがすぐに思いつかなくても、ふと思いつくこともありますので、随時リストに付け加えていくのがおすすめです。リストを見直すことで進捗状況も確認できます。
また終活では、お金の管理も大切です。充実した人生を全うするために「あとどれぐらいのお金が必要か」シミュレーションするとともに、どんな方法で管理するかを検討してみましょう。とはいえ、いろいろ不安で面倒と思う方も多いと思います。お金の整理や管理方法で不安を感じる人は、一度信託銀行などの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
執筆者紹介
續 恵美子(つづき えみこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(CFP)
生命保険会社にて15年勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。「生きる上で大切な夢とお金のことを伝える」をミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。
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