エンディングノートを作成するメリットは? エンディングノートの作り方や遺言書との違いなどについて解説

終活の一つとして、エンディングノートを作成する人が増えています。エンディングノートとは、自分の情報や財産状況、家族に対する想い、残りの人生でやりたいことなどをまとめて記載するノートで、遺言書よりも気軽に作成できます。ただし、エンディングノートを作成する際は、気を付けたいポイントもあるため、しっかりと押さえておきましょう。
本記事では、エンディングノートを作成するメリットや記載内容、遺言書との違いや作成時の注意点などについて説明します。あわせて、エンディングノートに記載した内容を第三者に知られることなく、確実に家族へ伝えるためのおすすめの方法についても紹介します。
エンディングノートとは?
エンディングノートとは、自分自身に万一のことがあったときに備えて、自分に関するさまざまな情報をまとめておくノートです。記載内容の詳細については後述しますが、一般的には自分の死後、家族が困らないように所有している財産や口座を開設している金融機関の情報、葬儀などに関する希望などを書き留めておきます。
とはいえ、書く内容に決まりはなく、家族や親しい人に対する感謝の気持ちや想いを書いたり、備忘録として、今後やりたいことなどを書き綴ったりしても問題ありません。
エンディングノートを作成するメリット
書く内容によっても異なりますが、エンディングノートを作成する主なメリットには、以下の2つが挙げられます。
- 自分の死後に家族の負担を軽減させる
- 自分自身も安心して残りの人生を過ごせる
例えば、金融機関の口座や生命保険の手続き先、その他の財産状況などをまとめて記載しておけば、家族が必要な連絡先や手続きを把握しやすくなります。預金通帳や保険証券などを探す手間をなくし、スムーズに手続きを進めることが期待できるでしょう。
家族であっても、細かいことは案外知らないことが多いものです。例えば、「誰に連絡すれば良いのか」「葬儀やお墓はどうすればいいのか」といったことも希望が分からなければ、家族としては思い悩んでしまうかもしれません。連絡して欲しい人や連絡先、葬儀やお墓に関する希望、準備状況などをエンディングノートに記載していれば、家族の負担軽減や安心につながります。
また、これらの自分が気になるさまざまなことを家族に伝えることが、自分自身にとっての安心にもつながるでしょう。エンディングノートを書きながら、財産状況の確認ができたり、これまでの人生でやり残したことやこれからやりたいことなどの整理ができたりします。残りの人生を計画的かつ充実した過ごし方ができるようになれば、エンディングノートを作成する効果は大きいでしょう。
エンディングノート作り方は自由
エンディングノートの作成方法や書く内容は、遺言書のように決まりがないため、自由です。例えば、遺言書を自筆証書遺言で作成する場合は、遺言の作成日付や遺言者の氏名、遺言内容を必ず遺言者が自書押印しなければならないという決まりがあります。また、日付は作成した日を特定できるようにすることが必要です。例えば「○月吉日」といった書き方ではなく、「2023年2月15日」などと具体的に書かなければなりません。
エンディングノートには、こういった決まりがないため、気軽に作成できます。随時書くことを思いついた際に書き足したり修正したりすることも可能です。エンディングノート自体も自由で、書店や文具店などで売られている市販のものや、インターネットでダウンロードしたものを使っても問題ありません。
これらは、すでに書く項目が用意されているため、何を書こうかあまり悩まずに済むでしょう。もちろん、一般的な大学ノートやパソコンの文書作成ソフトなどでオリジナルのエンディングノートを作成しても大丈夫です。「自分で作成したいけれど書き方が分からない」という人は、法務局が作成しているエンディングノートもあるため、参考にしてみてはいかがでしょうか。
エンディングノートは何を書く?
エンディングノートに書く内容にも、「これを書かなければいけない」「書いてはいけない」といった決まりや制限がありません。もし、何を書けばいいか迷っているのであれば、以下のような内容を書いてみてはいかがでしょうか。
- 自分の家族や大切な人に伝えておきたいこと
- 自分が生前、または死後にやってもらいたいこと
- 自分がこれからやりたいこと など
「エンディング」という言葉から「終わり」や「終局」と捉えてしまい、自分の死後、家族に見てもらうノートと考える人もいるかもしれません。しかし、エンディングノートは認知症などで自分の意思を伝えにくくなったときにも役立ちます。そう考えると、生前に見てもらうことも意識しながら、書く項目を考えるのが良いでしょう。
エンディングノートに書いておきたい内容として、例えば以下の6つのような項目があります。
気になることや手続きして欲しいこと
普段使っているスマートフォンやパソコン、飼っているペットといった気になることや解約手続きなどについて書いておきましょう。特に、スマートフォンやパソコンには、個人を特定できる情報がたくさん保存されています。使わなくなったからと安易に処分してもらうのではなく、情報削除や解約・解除などの手続きまでしてもらうことが必要です。
家族などが確認できるように、以下のような情報を記載しておくと良いでしょう。
- スマートフォンやパソコンへのログイン情報
- 登録しているWebサイトのID・パスワード
- SNSアカウントのID・パスワード
- オンライン口座(金融機関名)
- 電子マネーアプリ
- 音楽、動画、電子書籍などの有料サービス
- 写真、動画、住所録の保存データなど
もしもの時の連絡先
もしもの時に連絡して欲しい連絡先や連絡の仕方(電話番号・Eメール・コミュニケーションアプリなど)を記載しておきましょう。
- 友人・知人
- 習いごとや参加している協会や団体など
- 仕事をしている人は職場や取引先など
- 口座や契約のある金融機関など
医療介護の希望
もし、病気で重とくな状態になった場合のために「緩和治療や延命処置をして欲しいかどうか」「介護は自宅と施設のどちらを希望するか」など、医療や介護に対する希望を書いておくと安心です。加入している医療保険や介護保険があれば、これらの情報(保険会社、商品名、保険証券の置き場所など)も書いておきましょう。
葬儀・お墓について
葬儀の形式や規模、呼んで欲しい人などの希望があれば書いておきましょう。また、葬儀社の会員制度(積み立て金など)や互助会などを利用している場合は、その情報も記載しておくと安心です。お墓に対する希望や情報も書いておくと、家族が迷わなくて済むため、不安軽減につながります。
財産状況
所有している財産の一覧を記載しておくと、遺産分割や相続税申告手続きに役立ちます。なお、借入金やクレジットカード、電子マネーに関する情報も忘れず記載しておきましょう。
- 預貯金口座(金融機関名)
- 証券口座(金融機関名)
- 保険契約(保険会社名)
- 不動産(所在地・地番・家屋番号)
- 自動車
- 貴金属
- ローン
- クレジットカード など
形見分け
自分の形見として、特定の人に引き継いで欲しい物があれば記載しておきましょう。
エンディングノートの注意点
エンディングノートは、気軽に作成できるため、自分自身のことや自分の財産に関するほとんどの情報を記載してしまう人もいるかもしれません。しかし、作成にあたって注意しておきたいこともあります。エンディングノートを作成する際は、以下の3点を心がけておいてください。
法的効力はない
先述したように、形見分けや財産処分についての希望を書くこともありますが、エンディングノートには遺言書のような法的効力はありません。あくまでも書いた人の希望のみとなるため、例えば「○○(特定の財産)を△△(特定の人)に引き継いで欲しい」といった内容を記載しても実際に相続できるわけではないため、注意が必要です。
また、財産内容によっては指名された人が困惑したり、他の相続人の不満が募ったりして争いの火種となってしまう可能性もあります。気軽な想いでエンディングノートに書いたことが実際の相続でトラブルとなっては困りますから、エンディングノートと遺言書の違いをしっかりと理解しておくことが大切です。書く内容に応じて両者を使い分けるのもよいでしょう。
エンディングノートと遺言書の作成要件の違い
エンディングノートと遺言書では作成用件の有無が異なります。遺言書の場合は、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つの方式があり、それぞれに民法で作成要件が定められています。先述したように遺言の内容や遺言の作成日付、遺言者氏名の自書、押印などは必須要件です。また、遺言書は死亡時に効力が発生します。
エンディングノートの場合はこうした要件はありません。確認時期も存命中であったり、死後であったりさまざまです。保管や閲覧の場所、閲覧方法も自由です。ただし、エンディングノートには法的な効力はありませんので遺言書の代わりとはなりません。
いろいろと自由で気軽に書けるエンディングノートですが、もし法的効力を求める場合はエンディングノートではなく遺言書にする必要があります。
保管場所に注意
書く内容によっても異なりますが、エンディングノートにはパスワードや実印・通帳の保管場所など、本来生存中は第三者に知られてはいけない情報がまとめて記載できます。万一、第三者に盗み見られてしまうと盗難や詐欺被害に遭うリスクもあります。情報漏えいとならないように、エンディングノートの保管場所や保管方法には、細心の注意を払うことが大切です。
エンディングノートの存在を知られなければならない
厳重に保管することは大切ですが、家族などにエンディングノートの存在を知ってもらえなければ、記載した内容を伝えることができません。エンディングノートの意義は、自分の病気や介護、死亡などに直面したときに家族の当惑や負担・不安を軽減したり、自分の希望や想い、家族などに対する感謝の気持ちを伝えたりすることにあります。
せっかく作成しても、伝えたい相手がエンディングノートの存在を知らず、結果的に伝えたい情報や想いが伝わらなくなるのでは本末転倒です。
エンディングノートを金融機関に預ける制度を活用すると安心
自筆証書遺言の場合、「遺族が遺言書の存在を知らない」という事態を防ぐことができる「自筆証書遺言書保管制度」の利用が可能です。この制度で、法務局に遺言者を保管してもらうことで、遺言者の死後に法務局から相続人などに連絡が届きます。しかし、先述したようにエンディングノートは遺言書とは異なるため、法務局に預けることはできません。
そこで、エンディングノートの存在や、書いた内容を伝えたい相手に確実に伝わる別の方法を検討してみましょう。例えば、信頼できる人や金融機関にエンディングノートを託しておく方法があります。例えば、三井住友信託銀行が提供している「おひとりさま信託」では、エンディングノートをお預かりすることが可能です。
預けたエンディングノートは、スマートフォンやパソコンから何度でも書き替えることができます。そのため、自分の身の回りや財産状況に変化があっても安心です。万一の時には、登録している通知人に三井住友信託銀行から連絡が届きます。
先述したようにエンディングノート単独では法的効力がありません。しかし、希望通りに死後の手続きや財産承継などを実行してもらうためには、エンディングノートの内容に法的効力を持たせるようにすれば安心です。例えば、葬儀・埋葬の手配や身の回りの死後事務については、法人と委任契約することで法的効力が発生します。また、金融機関と信託契約を結ぶことで、自分の死後に財産を承継させたい人に確実に渡すことができるでしょう。
エンディングノートの作成に加えて、安心度がより一層高まるのではないでしょうか。
エンディングノートと遺言の使い分けもおすすめ
エンディングノートの作成は、自分自身や周りの人間にとって大きなメリットがあります。気軽に作成できるため、終活の一環としてエンディングノートを作成してみてはいかがでしょうか。ただし、エンディングノートには大切な情報を書き込むことになるため、保管場所に留意しながら適切に管理することが重要です。
自宅で保管するのが心配な場合は、信頼できる人や金融機関に託しておくのもよいでしょう。例えば、金融機関であればエンディングノートの内容に従い、預かり資産を管理してくれるサービスの提供を行っているところがあります。
なお、財産承継の希望によっては、別途、遺言書を作成したほうが良い場合もあります。エンディングノートと遺言書の上手な使い分けについて、信託銀行などの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
執筆者紹介
續 恵美子(つづき えみこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(CFP)
生命保険会社にて15年勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。「生きる上で大切な夢とお金のことを伝える」をミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。
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