ショートコラム
民事信託(家族信託)の活用事例
~アパートを信託する~

三井住友信託銀行に信託口口座の開設をご相談いただいたお客さまの事例を簡単にご紹介いたします。
~アパートを信託する~
Bさんは長年アパート経営をしてきました。保有物件は築40年と老朽化が進んでおり、空室が多くなってきました。
また、近隣の賃貸物件は建て替えが進んでおり、アパートの建て替えを検討することになりました。
Bさんが付き合いのあるハウスメーカーの営業担当者に相談したところ、
- 建て替えには入居者との立退交渉(賃貸人が賃借人へ契約の解約を希望する場合は、6カ月以上前に申し入れが必要)、現況建物の取壊し、新築工事請負契約と金融機関の借り入れなど時間がかかる。
- もし、アパート建て替えプロジェクトの途中で認知症などになり判断能力が低下してしまうと、請負契約や金融機関からの借入れができなくなり、建て替えが止まってしまう可能性があるため、そのリスクに備えて民事信託(家族信託)の利用が考えられる。
というアドバイスがありました。
同年代のお隣さんには認知症の傾向がありアパート経営が難しいという話を聞いていたこと、Bさんも最近物忘れが多くなり自分に不安を持ち始めていたこともあり、ハウスメーカーの営業担当者に民事信託に詳しい司法書士を紹介してもらいました。
後日、長女と一緒に、紹介された司法書士に民事信託による対策を相談し、受託者を長女、委託者兼受益者をBさんとする信託契約を締結することにしました。ちなみに、アパートは信託終了後に長女が受け取れるよう長女を帰属権利者に指定しています。
解説
不動産賃貸業も立派な事業であり、次世代への事業承継も計画的に行う必要がありますが、その一つの方法として民事信託を活用する方法があります。
事例のようにご子息を民事信託の受託者とすることで、物件のメンテナンスや月々の家賃の入金管理など不動産賃貸業を任せることができる一方、委託者を受益者とする信託とすれば経済的には自分自身が所有者のままですから一般的に贈与税は発生しません。
そして、ご子息を帰属権利者に指定しておき、自分の死亡時に信託を終了させると、ご子息に残余財産である賃貸不動産を遺すことができます。
アパート等の賃貸不動産を信託する場合、賃貸管理会社が入る場合は問題ありませんが、管理会社を通さず直接管理する場合は、信託開始後、家賃振込口座を民事信託の管理のために開設する信託口口座に変えることが必要です。
具体的には信託口口座に家賃を振り込むよう家賃振込口座の変更を「振込先変更通知書」で依頼します。
もし、家賃振込口座を変更せず委託者の口座のままにしておくと、委託者が認知症になったり相続が発生したら、委託者名義の家賃振込口座が凍結されてしまい、受託者は家賃を受け取れず、また、アパートローンの返済ができなくなるなど不動産賃貸業に支障をきたす恐れがあります。つまり民事信託を活用した意味がなくなってしまうのです。
また、不動産の名義も信託法上受託者名義に変更する義務があります。
民事信託の組成や不動産の信託登記にはこのような知識や経験が必要ですので、経験ある弁護士や司法書士等の専門家にご相談ください。また、税務に関しては税理士にご相談ください。
民事信託について詳しく知りたい方はこちらへ
民事信託に関する弁護士紹介制度の活用
三井住友信託銀行では民事信託の組成等を希望するお客さまに、当社が提携する弁護士会が推薦する弁護士を紹介する無料(※)のサービスをご用意していますので、お気軽にご相談ください。
※弁護士を紹介するサービス自体及び初回の法律相談料は原則無料です。但し、相談場所などによっては日当・交通費等の実費が発生する場合があります。
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